現代にダ・ヴィンチを連れてくる

ダ・ヴィンチについての映画を見た。イタリア文化会館でなので、今後、一般のアート・シアターで見れるのかどうか。

難しい映画だ。やたらと尭舌なレオナルド本人が出てきて、現代のジャーナリスト2人の質問に答える、という時空を超越したシュールな構成になっているが、ストーリー・テラーとしての映画の出来は不明だ。

時代も「つれてくる」のだから、映像製作上の逃げ手なのだろうが、画面は室内か、洞窟、あるいはそう見える協会内のような所で、いつも薄暗い。というより真っ暗だ。彼が最後に住んだ城館の中という想定なのだろうが。

画面が表す中世的な雰囲気は、ある種の、かの時代の気分を実感させてくれるものがあるので、厳粛な気持になるが、表記された日本語訳を読んでいるうちに画面が変わってしまうシーンが少なくなく、なかなか追いつけない。もしかすると日本語訳が的確ではないのかもしれない。それほど言っている言葉は、理解するのが難しい内容だ。あるいは監督が、映像と言語の乖離に無頓着だったのかもしれない。

画面の中世的な雰囲気で言えば、もしダ・ヴィンチが、臭気の中で死体を解剖したとしたら、凄い執念か、むしろ狂気の沙汰のようにも感じられ、ここまでやるなら付いて行けない、という気持ちにさせた。そういう実感のようなものを見せた点では成功だろう。